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第1部 一章 【財前姉妹】その1 第三話 テーブルゲーム研究部

Author: 彼方
last update Last Updated: 2025-02-28 13:27:44

3.

第三話 テーブルゲーム研究部

「…………ありません」

 はー。負けた。私、将棋うまくないのかな。なんだろう、途中で面倒になっちゃうんだよね。読むの。自分の駒動かしてさっさと攻めたくなっちゃう。向いてないのかな。でも、悔しいな。

 私、竹田杏奈。高校1年生。みんなにはアンって呼ばれてる。いとこのお兄ちゃんは将棋の天才で、私も自分で言っちゃうけど、そこそこアタマはいい方だからある程度、頭脳戦のゲームは強かった。

 でも、ダメね。将棋は向いてないかも。攻めたい攻めたいって気持ちが前に出過ぎて読みが疎かになるのね。わかってはいるの。もう少し先まで考えなきゃって。でも、それが出来なくて。

 それでも同級生の中では一番強かったんだけど、将棋部の上級生には敵わない。

「やっぱ負けるとつまんないなー」と、私は当たり前のことを独りで呟いていた。

 なんか、将棋にこだわることないかな。オセロとかチェスにも手を出してみようかな。自分の性格に合ったテーブルゲームがあるかもしれないし。

 この学校の将棋部は強くて将棋部として知名度を上げていたが本来、この部活動の名前はテーブルゲーム研究部であり他のゲームも部室にたくさんあるのだ。私は久しぶりに倉庫を開けて別のゲームを見ていた。軍人将棋にダイヤモンドゲーム、モノポリーなど色々なゲームがそこには置いてあった。

 その中で何だか分からない書道セットのようなエンジ色をしたケースが気になった。なんだろこれ。

「よっ……と、なにこれ重っ!」

コンコン!

 その時、部室の扉を叩く音がする。

「どうぞー」

「失礼します」

 入ってきたのは黒髪ボブが似合う美人だった、青のリボンだから2年生だ。うちの学校はリボンが3色あって学年がわかるようになっている。今年度は1年生が赤色、2年生が青色、3年生は黄色のリボンである。正直赤が一番可愛い。私は今年ここに入れてラッキーだった。来年だったら試験を受けてすらいないかもしれない。黄色のリボンはピンとこない。少なくとも、私の好きな色ではない。青もしっくり来ない。性格に合わないと思う。赤の年度だったから入学を決めたのだ。

 しかし、今入ってきた2年生には、やや切長の瞳に黒髪ボブで青のリボンというクールビューティーな組み合わせが見惚れる程似合っていた。

「あなた、それ」

 クールビューティーな2年生がその時急に私に近寄ってきた。

「なななななんでしょうか?」

「麻雀、出来るの?」

「へ?」

 私が倉庫から出した臙脂色の書道セットのようなものは麻雀牌だった。

「や、まあ、ゲーム機でならやったことありますけど……それが?」

「私、財前カオリ。麻雀する友達を探しているの。良かったら仲良くしてくれませんか」

「え、あ、はい、よよ喜んで」

 こうして竹田アンナと財前カオリの交流が始まった。

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